まちへかえろう7.8

まちへかえろう7.8

 まちのひとは化け物にきがつきました。そ

して手をのばしている化け物のちいさなての

ひらにたくさんのプレゼントをのせました。

こわれたオルガンからはおんがくがなりだし

ました。こどもはたのしくひきました。オル

ガンはあふれんばかりのおんぷをてのひらに

のせました。としよりはあたたかにもうふを

てのひらにのせました。ペンギンはそらをと

べるつばさをてのひらにのせました。ゆきは

あめと手をつなぎあめはおひさまと手をつな

ぎました。大輪のひまわりはたねをまちにふ

らせました。どのいえでもシチューが冬のそ

らにたちのぼっていました。化け物は「あり

がとう」といいました。みんなはわらってい

ました。まちのみんなも「ありがとう」とい

いました。
8
 化け物はまちのひととさよならをすると、

びんをうみにかえました。「ありがとう」

「ありがとう」「ありがとう」「ありがとう」

化け物は「ありがとう」ということばがここ

ちよくひびきました。「ありがとう」「あり

がとう」「ありがとう」「ありがとう」ここ

ろのなかでなんでもつぶやきました。そして

うたいました。「ありがとう」「ありがとう」

「ありがとう」

つづく
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# by junko-oo1 | 2007-02-28 21:17

まちへかえろう5.6

まちへかえろう5.6

 化け物はあいしました。なきました。むね

をうつので、なみだがあとからあとからこぼ

れてくるのです。びんのなかにはまちがあり

ました。たくさんのひとのなみだがありまし

た。やさしいこころがありました。それがち

いさなほのおになってゆれているのでした。

化け物は「それはちがう」とつぶやきました。

それはやさしくひびきました。

6

 まちにはたくさんのゆめがねむっていまし

た。化け物はまちに手をのばしました。まち

のなかにはたくさんのひとがねむっていたの

でうれしかったのです。あるいえではシチュ

ーが冬のそらにたちのぼっていました。ある

いえではこわれたオルガンをこどもがひいて

いました。あるいえではねことねずみがより

そってねていました。あるいえではしずかに

雪がふっていました。あるいえでは大輪のひ

まわりがそらでゆれているのでした。としよ

りはあたたかいもうふのなかでねむるのです。

ペンギンは空をとびました。ゆきはあめにか

わりました。化け物はうれしくなりました。

とびあがりたいきもちになりました。なにも

かもがとてもしずかにうごいているのでした。

つづく
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# by junko-oo1 | 2007-02-10 21:24

まちへかえろう3.4

まちへかえろう3.4

 化け物はいつも「それはちがう」がくちぐ

せでした。「それはちがう」というたびにふ

くろからかぜがにげていきました。かぜはそ

んなことばがすきではなかったので、どんど

んふくろからにげていくのでした。それでも

化け物にとって「それはちがう」はとてもや

さしいことばにきこえました。だから、まる

でくちぶえでもふくように「それはちがう」

となんどもつぶやくのでした。

4
 化け物はひとりになりました。びんがうみ

にながれついたのは化け物がひとりになった

ときでした。化け物はちいさなてのひらにび

んをつつみました。びんはとてもあたたかで

す。まるでうまれたてのひよこのようでした。

びんをのぞきこみました。なにがみえたので

しょう。化け物はたくさんのことをかんがえ

ました。だってこんなすばらしいことはない

からです。化け物のこころのなかにはちいさ

な花がたくさんさきました。そして花はつつ

ましくおっとりとしているのでした。やさし

いじかんがながれました。

つづく
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# by junko-oo1 | 2007-02-09 11:57

小説 まちへかえろう

まちへかえろう

二ば毬を

 てっぽうとかぜ


 化け物が海で青い不思議なびんをひろいま
 
した。とても美しいびんでした。とてもとて

もとうめいなびんでした。たとえば人がいっ

しょうのうちで流すなみだをあつめてけっし

ょうさせてもこんなとうめいなびんはできな

いでしょう。このびんはどこから流れついた

のでしょう。



ひろったのは化け物でした。


 化け物は、夜がかかえる星のあいだをふら

ふらとさまよっていました。化け物はやぶれ

た夜をぬうしごとをしていました。どうして

そんなしごとをしていたのでしょう。たとえ

ばながいてっぽうがありました。たくさんの

ひとはよるかなしみました。よるがやってく

るとよるをてっぽうでうったのです。おおき

なおとやちいさなおとがたくさんすると、よ

るのそらにはたくさんのあながあいてしまう

のでした。そして化け物はみにくかったので

した。

2

 よるに白いカーテンがさがると、化け物は

かなしみました。よるのそらがみたかったの

です。ほしのかがやくそらがみたかったので

す。かぜをふくろにつめました。化け物がせ

なかにせおっているふくろをひらけると、か

ぜがこきゅうでもするようにはいりこみまし

た。かぜがはいるとふくろはちがかようよう

にどくんどくんとゆれているのでした。化け

物はかぜをあつめました。みにくかったから

でした。たくさんのちいさなあなや、おおき

なあなからかぜがほそくぬけていきました。

つづく
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# by junko-oo1 | 2007-02-08 16:36

鬼と月と赤い砂漠24

鬼と月と赤い砂漠24 最終幕

二ば毬を

 黒いカーテンがたくさんこうもりの羽根

のように重なりあっています。

 お客はざわざわとざわめいています。

 あちこちでパンフレットや紙屑やらがとん

でたいした騒ぎになっています。

 あの、月のかたちをしたとびらから鬼がと

うじょうしておわりのこのおはなし、とうじ

ょうしたのは汗をだらだらかいた、ひょろな

がいきりぎりすだけ。

 舞台裏

 (まきげのプロンプター)

 さあ、あとひと息ですよ。最後は間違えな

いようにおねがいします。
 
 (シルクハットのきりぎりす)

 いや、もうまちがいだらけじゃないか。

 だいたい、こおにくんがあの場面で眠ってし

まっているのすが、なにもかも間違いなのだ。

 番狂わせだ。だから、こんなしどろもどろに

 (まきげのプロンプター)

 まだ、こどもなんですもの仕方がないです

わ。私はうしろでひかえてますからね。団長

さん。

 そういうとまきげのプロンプターは、シル

クハットのきりぎりすのうすいくちびるに軽

くキスをしました。

 きりぎりすはにっこり笑うときりぎりす

の仮面を片手ですこしもちあげて、もういち

どまきげのプロンプターにキスをしました。

 (シルクハットのきりぎりす)

 ぼくらもそろそろ子供をつくろう

 おにのこどもでも

 てんしの こどもでも

 やさしいこころで そだってくれるような

 こころは月のかげのようで

 ゆらめく 月のかげに

 あいのあふれるひかりをそそごう

 そう ただひとことでいってしまえば
 
 おひさまのひかりをあびている

 おつきさまのはなし

 ゆらめく夢のほとり

 FIN


CAST

 鬼の子

 チイサナオオムラサキノフグリ

 鬼のおかあさん

 鬼のおとうさん(ファン・リーベ・ブリトニア)

 クイーン

 ジャック

 大けだまガラス(友情出演)

 まきげのプロンプター

 音楽 鬼こおろぎ、エキストラのきりぎりす

おわり
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# by junko-oo1 | 2007-02-07 16:59

鬼と月と赤い砂漠23

鬼と月と赤い砂漠23

二ば毬を

 「さあ、ためらわずにあけたまえ」

 きりぎりすは、なにかが違っているような

きがしましたが、こ鬼と鬼のおかあさんの後

ろにたって、この鬼の親子がとびらをあける

のをうながしました。


 空は藍色になって

 扉は真っ赤に血がにじんだようにまんまる

にかがやいています。

 

 赤くて淡いやさしいひかりが三人をつつみ

こみました。

 「それでは、そうあなたの願いを強く願い

なさい」

 きりぎりすは目を細めていいました。

 そして、鬼のおかあさんはうなずくと、こ

鬼をもういちど背負いなおして金の鍵を鍵穴

にさしこみました。

 鍵穴はきーんきーんきーんと幾重にも重な

りあってひびきあうし、おいかけあうように

高い音をならしました。

 そして、扉は音もなく

 すうっちひらきました。

 
 鬼のおかあさんは欠けはじめた扉のなかに

一歩すすむと、辺りはただの暗闇になりまし

た。

 後ろをふりむくと、ただ赤い月がゆらゆらと

ゆれていました。

 すると、次の瞬間にものすごい風がこ鬼と

鬼のおかあさんを吸い上げ、金色の台風の目

玉が暗闇じゅうをおどりだしました。

 赤い月は一瞬強く輝く、そしてすぐあとに、

強い風がろうそくをけすときのようにきえて

しまったのです。

 そして、きりぎりすが暗闇のカーテンをど

こからか開けると幕からでてきました。

つづく
次は最終幕
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# by junko-oo1 | 2007-02-06 04:01

鬼と月と赤い砂漠22

鬼と月と赤い砂漠23

二ば毬を

 「さあ、ためらわずにあけたまえ」

 きりぎりすは、なにかが違っているような

きがしましたが、こ鬼と鬼のおかあさんの後

ろにたって、この鬼の親子がとびらをあける

のをうながしました。


 空は藍色になって

 扉は真っ赤に血がにじんだようにまんまる

にかがやいています。

 

 赤くて淡いやさしいひかりが三人をつつみ

こみました。

 「それでは、そうあなたの願いを強く願い

なさい」

 きりぎりすは目を細めていいました。

 そして、鬼のおかあさんはうなずくと、こ

鬼をもういちど背負いなおして金の鍵を鍵穴

にさしこみました。

 鍵穴はきーんきーんきーんと幾重にも重な

りあってひびきあうし、おいかけあうように

高い音をならしました。

 そして、扉は音もなく

 すうっちひらきました。

 
 鬼のおかあさんは欠けはじめた扉のなかに

一歩すすむと、辺りはただの暗闇になりまし

た。

 後ろをふりむくと、ただ赤い月がゆらゆらと

ゆれていました。

 すると、次の瞬間にものすごい風がこ鬼と

鬼のおかあさんを吸い上げ、金色の台風の目

玉が暗闇じゅうをおどりだしました。

 赤い月は一瞬強く輝く、そしてすぐあとに、

強い風がろうそくをけすときのようにきえて

しまったのです。

 そして、きりぎりすが暗闇のカーテンをど

こからか開けると幕からでてきました。

つづく
次は最終幕
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# by junko-oo1 | 2007-02-06 04:01

鬼と月と赤い砂漠22

鬼と月と赤い砂漠22

二ば毬を

 きりぎりすはべっこうの眼鏡を細長い手で

もちあげました。

 「それでも、このとびらのむこうに行きた

いというならばとめたりはしないがね。いっ

たいどんな恐ろしいことになるか、わたしは

しらないよ」

 きりぎりすはそういうと、流暢にしゃべり

だしました。

 鬼のおかあさんにはさっぱり何を言ってい

るのかわかりません。にんげんのせかいのこ

とや、ぼうやのことや、この金の扉が、夢の

扉だということ、たしかにきりぎりすはその

ようなことをいっています。

 「いったい、あなたは何をいっているの」

 鬼のおかあさんがそういうと、きりぎりす

はなおもつづけました。

 「まあ、まちなさい。(じつはここでこ鬼

くんが目をさましていなければならないはず

なのに、まあいい)

 あの、この扉はとても意地悪でね。そう、

わたしのように賢くて意地悪なのさ。

 このむこうにはきみがいちばんたいせつに

しているものが待っている。

 願いは一度だけだ。

 きみが人間の世界をのぞむなら
 
 扉のむこうには人間の世界がきっとある

 
 しかし、願いは一度だけ。

 夢の扉が開いた瞬間に、それは欠けていく

 きみの住んでいる鬼の世界がむこうがわに

流れだしてしまわないように。

 だから、きみはもうにどと鬼の世界にはも

どってこれないかもしれないよ。なにが一番

大切なのか良く考えることだね」

 そして、きりぎりすはスペアの金の鍵を鬼

のおかあさんに渡しました。(でも、たしか、

これは鬼の子どもに渡すはずだったのだが、

台本とえらくちがうのでは)


 こ鬼はぐっすりと眠っています。

 鬼のおかあさんは、きりぎりすの言葉がは

たして自分がいわれていることなのかどうか

はわかりませんでした。

 しかし、金の鍵をもらったならば、鬼のお

かあさんが願うことはただひとつなのです。

 鬼のおかあさんが金の鍵を手ににぎると、

とびらはきらきらとかがやきだしました。

 金の鍵はぼんやりときらきらとして、そし

て夜明けの星のようにとうめいな光りをはな

っていました。

つづく
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# by junko-oo1 | 2007-02-05 18:20

鬼と月と赤い砂漠21

鬼と月と赤い砂漠21

二ば毬を

 きりぎりすは黒いシルクハットをかぶって、

びしっと折り目のついたタキシードを着てい

ました。そして、細長い顔にはとても似あわ

ない度の強いべっこうの眼がねをかけていま

した。

 「どうも、ようこそいらっしゃいました」

 きりぎりす丁寧におじぎしした。

 鬼のおかあさんは慌てずにいいました。なぜ

ならこのきりぎりすは鬼のおかあさんにはと

てもかないそうにないほど弱くかんじたから

です。

 鬼のおかあさんは黙っていました。

 きりぎりすはその鬼のおかあさんの堂々と

した様子に少し顔をひきつらせると、うわず

った声でいいました。

 「おこさんは、どうやら眠っているようで

すね」不気味な沈黙がつづいたあとで、きり

ぎりすはポケットから白いハンカチをとりだ

すと額の汗をふきました。

 「どうやら、おこさんはうちのクイーンと

契約をしているようですな。だからこのよう

にこんこんと眠っているのですな」

 鬼のおかあさんは鬼の子を自分の胸にだき

よせるといいました。

 「ところで、ここはどこで、あなたは誰な

のです」きぜんとした態度でいいました。

 「ただの劇場主です」

 きりぎりすはそういうと、ガラス糸のよう

に細いうでにまきついた時計の時間を確認し

ました。ちっ、もう時間がない。そうちいさ

くつぶやくと、声をあらげていいました。

 「さあ、こおにくんおきなさい。君がクイ

ーンと契約したときに金の鍵をうけとってい

るはずだ」

 きりぎりすは、そういうとこ鬼のポケット

をさぐりました。「ない」

 きりぎりすはそういうと、額から汗がぼた

りぼたりと落ちはじめました。

 あの鍵がなければ、わたしも人間の世界に

戻ることができないではないか。

 月はまもなく欠けはじめる欠けはじめてし

まったら、ここからどこにもいくことができ

ないまさにはてのはてにおきざりだ。

 やはり、ほんものの鬼を人間の世界に連れ

出すなんて無理があったか。

 「とにかく、その劇場主のかたとわたしに

ちとなんの関係があるのです。あなたがどこ

からきた、なんの魔物かはしりませんが、私

たちを帰してください。鬼とあなたたちはな

んの関係もないはずです」

 きりぎりすはシルクハットを深くかぶりな

おしました。「だまれ、これではわたしが

かえれないではないか。やくそくがちがう」

 そうして息を荒げていましたが、少しおち

着くと言いました。「あなたのそのこ鬼くん

が願ったのですよ。そのこ鬼くんがなにをみ

たか知らないが、ここの扉は夢の扉さ。子の

むこうにむこうに・・・ええっ(プロンプタ

ー次、次のセリフ)(まきげのプロンプター)

「・・・」そう、人間の世界があるなんての

はきいたことがないんだ」きりぎりすはそう

いうと、もういちど額の汗をふきました。

つづく
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# by junko-oo1 | 2007-02-02 01:59

鬼と月と赤い砂漠20

鬼と月と赤い砂漠20

二ば毬を

金の鍵とシルクハットのきりぎりす

 鬼のおかあさんは、こ鬼をせおいながら白

い羽根の上をずんずんと歩いていきました。

 どこまでもいっても、砂と、白い羽根ばかり

だわ。はたしてこのまま進んでいってもいい

ものかしら。ああ、誰でもいい、ここからつ

れだしてほしい。鬼のおかあさんは、そうお

もいながらも、ずっとずっとはてがあるのか

ないのかわからない赤い砂漠の上を歩きつづ

けました。

 白い羽根ばかりのところをすぎると、それ

でもついには、不思議な白いもらやもやの中に

たどりつきました。(鬼のおかあさんは知り

ませんが、おそらく最初にこ鬼がみた白いも

やもやとおなじものでしょう)

 白いもやもやの前にはとてもちいさい不思

議なかたちの赤い扉がほっそりとたっていま

した。

 鬼のおかあさんは、背負っているこ鬼を静

かにたくさんの羽根のなかにおろしました。

 羽根はうわわわわわっとしずかにまいあがっ

て、こ鬼の顔を隠しました。

 「なんてところかしら」「いままでこんな

怖いおもいをしたことがあるかしら」

 鬼のおかあさんはその不思議な扉に手をか

けました。

 扉のむこうには何が待っているのでしょう。


 影のようなみかけとはちがって、小さな扉

はとてもがんじょうそうでした。

 こ鬼のおかあさんはためしに鬼のちから腕

でどんどんとそのがんじょうな扉をたたいて

みました。「だれもいないのかしら」

 扉はびくともしませんでした。

 扉にはちいさな鍵穴がついていました。

 鬼のおかあさんはその鍵穴をのぞきこみま

した。
 
 鍵穴のむこうは真っ暗で何もみませんで

した。

 鬼のおかあさんがそうやって鍵穴をのぞき

こんでいると、とんとんと誰かが鬼のおかあさ

さんの肩をたたきました。

 鬼のおかあさんはびくっとしながらうしろ

をふりむきました。

 キリンのように首の長いおおきな背のきり

ぎりすがそこにはたっていました。

つづく
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# by junko-oo1 | 2007-02-01 15:42