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鬼と月と赤い砂漠21

鬼と月と赤い砂漠21

二ば毬を

 きりぎりすは黒いシルクハットをかぶって、

びしっと折り目のついたタキシードを着てい

ました。そして、細長い顔にはとても似あわ

ない度の強いべっこうの眼がねをかけていま

した。

 「どうも、ようこそいらっしゃいました」

 きりぎりす丁寧におじぎしした。

 鬼のおかあさんは慌てずにいいました。なぜ

ならこのきりぎりすは鬼のおかあさんにはと

てもかないそうにないほど弱くかんじたから

です。

 鬼のおかあさんは黙っていました。

 きりぎりすはその鬼のおかあさんの堂々と

した様子に少し顔をひきつらせると、うわず

った声でいいました。

 「おこさんは、どうやら眠っているようで

すね」不気味な沈黙がつづいたあとで、きり

ぎりすはポケットから白いハンカチをとりだ

すと額の汗をふきました。

 「どうやら、おこさんはうちのクイーンと

契約をしているようですな。だからこのよう

にこんこんと眠っているのですな」

 鬼のおかあさんは鬼の子を自分の胸にだき

よせるといいました。

 「ところで、ここはどこで、あなたは誰な

のです」きぜんとした態度でいいました。

 「ただの劇場主です」

 きりぎりすはそういうと、ガラス糸のよう

に細いうでにまきついた時計の時間を確認し

ました。ちっ、もう時間がない。そうちいさ

くつぶやくと、声をあらげていいました。

 「さあ、こおにくんおきなさい。君がクイ

ーンと契約したときに金の鍵をうけとってい

るはずだ」

 きりぎりすは、そういうとこ鬼のポケット

をさぐりました。「ない」

 きりぎりすはそういうと、額から汗がぼた

りぼたりと落ちはじめました。

 あの鍵がなければ、わたしも人間の世界に

戻ることができないではないか。

 月はまもなく欠けはじめる欠けはじめてし

まったら、ここからどこにもいくことができ

ないまさにはてのはてにおきざりだ。

 やはり、ほんものの鬼を人間の世界に連れ

出すなんて無理があったか。

 「とにかく、その劇場主のかたとわたしに

ちとなんの関係があるのです。あなたがどこ

からきた、なんの魔物かはしりませんが、私

たちを帰してください。鬼とあなたたちはな

んの関係もないはずです」

 きりぎりすはシルクハットを深くかぶりな

おしました。「だまれ、これではわたしが

かえれないではないか。やくそくがちがう」

 そうして息を荒げていましたが、少しおち

着くと言いました。「あなたのそのこ鬼くん

が願ったのですよ。そのこ鬼くんがなにをみ

たか知らないが、ここの扉は夢の扉さ。子の

むこうにむこうに・・・ええっ(プロンプタ

ー次、次のセリフ)(まきげのプロンプター)

「・・・」そう、人間の世界があるなんての

はきいたことがないんだ」きりぎりすはそう

いうと、もういちど額の汗をふきました。

つづく
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by junko-oo1 | 2007-02-02 01:59