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童話 月と鬼と赤い砂漠11

鬼と月と赤い砂漠11

二ば毬を

「ふううあああああ」

 こ鬼はあやうく、びっくりしておっこちそ
 
 うになりました。

 「熱気球船だ。はじめて乗った」

 こ鬼はこれが夢なのかどうなのか考えるこ

 ともなく、熱気球船の火がゆっくりとしぼん

 でいき、うつくしく模様がえがかれた砂地に

 着地しました。
 
 こ鬼は強い風邪にふきたおされて船がかたむ

きぼてっととびでると、声をあげずにとびだ

しました。ふしぎとこわいかんじはありませ

んでした。ただ、美しいばかりでこ鬼は

ようやくようやく肺の奥から声をあげると

「やったあ、きっときっときのうの場

所だ」とたけびました。

 まありをぐるっとみまわすと、きりぎりす

たちはどうやらいませんでした。

 そして、きのうの白いもやのなかとはすこ

しちがって、雨や雷さまをかかえたような黒

い雲が、こ鬼のあしもとからがらがら蛇のよ

うなへんなもようになってはてのはてまで連

なっているのです。

 黒い雲はごろごろとあまえた猫のようにう

なっていました。

 こ鬼はあしで雲をけとばしながらどんどん

と進んで行きました。


 すこし歩くと、こんどはいつも鬼が遊びに

やってくるフグリの野原がみえてきました。

 「フグリの野原だ」

 こ鬼はかけだしました。

 そこでちいさなお花がいつもどおりに咲

いていましたが、おそらからは静かに青い石

のようなしらあっとした雪の子がふってきて

いました。

 だからでしょうか。ちいさなお花はいつも

どおりのようにいて、ひどく冷たいかんじが

したのです。

 こ鬼はフグリをさがしました。

 フグリはぽつんとなにもしゃべらないほか

のお花たちのまんなかで、ぐうぐうと眠って

のお花たちのまんなかで、ぐうぐうと眠って

いました。

 「フグリ、フグリ、起きてよ。ぼくだよ。

こ鬼だよ。フグリ、フグリ。ぼくたち、ひょ

っとしてにんげんの国にいけるかもしれない

んだ」

 フグリはねぼけまなこで目を半分あけると

あふうとあくびをしました。そして、こ鬼に

きびしい口調でこういいました。

 「いってはだめ。いってはだめ。にんげん

のすむところはあなたが行く場所ではないわ。

だって、あなたはじぶんがどんなすがたがみ

たことがあるの。

 なんてみにくい顔かしら。

 なんておそろしい顔かしら。

 火のような燃える髪は、にんげんの森をや

きつくして、そのおおきなてのひらはきっと

大蛇でも握りつぶしてしまいそう。

 ライオンでも恐ろしがるような、するどく

ひかる冷たい目」

 こ鬼はそれをきくと胸がはちきれないばか

りにどきどきして、ぼろぼろとなみだがこみ

あげてきました。そして、知らないうちにち

いさなお花たちをおおきなてのひらでけちら

していたのです。

 「フグリ、フグリ、ひどいよ。ひどいよ。

どうして、きょうはそんなことをいうの。い

つもはそんなことはいわないよ。フグリはい

つも、にこにこわらっていてくれて」

 こ鬼はそこまでいうとすすり泣きました。

 フグリはぺしゃんこになっていました。

 ほかのちいさなお花たちもこ鬼がけちらし

て、そこらじゅうに葉っぱや花のかけらがち

らばっていました。

 フグリはかけた顔でこ鬼をみました。

 「でも、きっとにんげんならそういうわ。

 なかよくできるものなら、とっくになかよ

 くしているはずよ」

そしてフグリはにこにこといつもりおりわ

らいました。

「みんな、あなたがやったのよ」

けちらしたちいさなお花たちは、何も口を

ききません。いつもどおりなのです。

雨がぽつぽつとふってきました。

フグリはもういちどいいました。

「いかないで。きっときずつくわ」

フグリもこ鬼もびしゃぬれです。かけた顔

には雨がふりそそいでいます。

その雨で砂漠には少しのみずがとおったの

でした。

こ鬼はおそろしくておそろしくて逃げるよ

うに先をいそいだのです。こ鬼が逃げても野

原はいつものようでだまったままでした。

つづく

 
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by junko-oo1 | 2006-12-27 16:16

鬼と月と赤い砂漠10

鬼と月と赤い砂漠10

こ鬼、ちいさな夜と子守歌

 ほぅほぅ。ほぅほぅ。

 こ鬼の家の庭にふくろうがやってきている

ようです。ふくろうはおおきな茶色のつばさ

でばさりと、おおいかぶさるように土におり

ました。こ鬼のみみがびくりとすると、ちゅ

うちゅうきいきいというさけびごえがきこえ

ました。

 こ鬼とフグリがはじめてけんかをした、お

おきな夜がやってきたのです。こ鬼は夜ごは

んを、いつもよりげんきよくさんばいもおか

わりしました。

 木の梢が窓をたたいて、まどべがかたかた

となっています。

 こ鬼はまたもや、みみをびくりとしました。

 よるの風がやってきているのでしょう。

 おやすみのじかんは、とんとんとかけあし

でやってきました。こ鬼はそのあいだ、にん

げんがでてくる絵本をなんどもよみかえして

いました。

 やがて、おかあさんとおとうさんがやって

きて、こ鬼の部屋でごうごうともえるおにゆ

りの花のかたちをしたランプをふきけすと、

こ鬼のベッドのそばのちいさなたんぽぽのか

たちをしたランプに火をともしました。

 「ぼうや、きょうもフグリちゃんのところ

にいっていたの」

 こ鬼はねむったふりをしました。鬼のおか

あさんは、「あら、もうねむっているわ」

おとうさんにいいながら「つかれているんだ

よきっと」そんな声がきこえました。鬼のお

かあさんはお布団をこ鬼のかたがしっかりか

くれるようにかぶせると、こ鬼の額にキスを

しました。

 「おとうさん、あの絵本よんで、おにの

こおにのこ」

 こ鬼はうとうとしながらいいました。「眠

れ、眠れ」鬼のおとうさんはやれやれという

顔をしながらつづきました。


 おそらに浮かぶは真っ赤ッか

 こ鬼「なにが、真っ赤ッか」

 とうさん「さあ、なんだろうね」


 月はかちかち歯をならし、

 こ鬼「なにをそんなに怖がった」

 とうさん「いや、寒かったのかもしれない

よ」


 こんこんわかでる、ちいさな泉

 ごほんごほんと、きつねがないた。

 こ鬼 「なにが、そんなに悲しかった」

 とうさん「いや、たぶん風邪をひかないように

しないといけないね」

 真っ赤なかおできつねがないた。

 こ鬼「やっぱり、きつねはないたんだ弱虫

だから。ぼくはなかないもの」

 とうさん「さあさあ」

 おにのこ、おにのこ、ねむレ、ねむレ

 おそらに浮かぶは真っ青ボタン

 「なにが青く浮かんだだろう。きっと」

 ちいさなおひさまてんてんついた

 まんまるてんで毬のよう「ちきゅうかも

しれない。青い青いちきゅう」

 ぼうでつついた。ちいさなねずみ
 
 こほん、こほんと、かぜをひいた

 「・・・」

 ねなさい、ねなさい

 お月のように

 「・・・」

 
 こ鬼はおとうさんにいつものように、たく

 さんしつもんをしながら、うとうととしてい

 きました。くらり、くらり、とおとうさんの

 顔がぼんやらしたりして、いつのまにか、お

とうさんの顔は輝く赤い月になっていました。

 そして、蒼く蒼くかがやく空の上にぼっか

りと、真っ赤な月が風船球のようにういてい

ました。おかあさんはにこにこしながらたん

ぽぽランプの火をふきけしました。そしてこ

鬼をおこさないように扉からそとにぱたんと

でていきました、ぱたぱたぱた、スリッ

パの音がとても遠くにきこえて、その音とと

もにとても真っ白いかがやく白い雲が波の飛

沫のようにこ鬼のまそらに広がっていました。

つづく
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by junko-oo1 | 2006-12-25 18:00

鬼と月と赤い砂漠9

鬼と月と赤い砂漠9

フグリのなみだとキャラバンのおはなし

二ば毬を

 朝はやく、鬼はフグリのいる野原にでかけ

ていきました。雲はあっさりしたもので、ホ

ウキではききった砂ほこりのようにつぶつぶ

の雲ひつじが空ではのんびりしています。

 春の弱くて、やさしいまんまるおひさまが

手をひろげてやさしくあかるいうたで野原を

つつみこんでいました。

 こ鬼はかけだしたいきもちをおさえて、お

とうさんとおかあさんがみていない、ほんの

朝はやくにいっこくもはやくフグリに会いた

かったのです。

 きっと、このふしぎなお話をきけばフグリ

はいつものばいのばいのばい喜んで、あのか

わいらしい笑顔でほほえんで、きっとぼくに

ついてきてくれるにちがいないし、おかあさ

んにも会えるにちがいないよ。

 こ鬼はそうおもうと、笑いたくなくても自

然に顔の筋肉がゆるんでにっこりとなって

しまうのでした。


 「フグリ、フグリ、きいておくれ」

 鬼はたくさんのムラサキイロのチイサナオ

オイヌのフグリからフグリをみつけだすと、

フグリをおこして、ゆめの話しをきかせまし

た。

 そして、フグリはそのお話をうんうんとう

なずいたり、興味ふかげに首をかしげたり、

かぜにあたまをふかれてみたりしたあとで、

そう。いつものとおり、こ鬼のはなしをひと

つののこらずみみずまで聞くてこういいまし

た。

 「こ鬼さん。こ鬼さん。行かないほうがい

いわ」フグリはそういうとブンブンとちぎれ

んばかりにくびをふりました。

 「行ってはだめよ」

 フグリにもわけがわかりませんでした。

 でもたしかに不安をかんじました。

 それともやきもちなのかもしれません。

 こ鬼が野原にもうこなくなるような気がし

たのかもしれません。

 でも、フグリのくちからはすこしずつこん

なことばがでてきました。

 
 「あなたは、この鬼の世界に満足していな

いの。

 やさしいおとうさんだって、おかあさんだ

っているじゃない。風だって、雨だってしの

げるおうちもあって、それに・・・

 自由にそこらじゅうをかけまわることだっ

てできる足だってあるし、冷たくておいしい

水だって、私たちみたいに神様にいただける

までまっていなくたっていいのよ。その手で

くみにいくことができるんだもの


 そんな、ぜいたくをいってはだめだわ」

 フグリにはこ鬼に意地悪なきもちはないつ

もりでした。

 でも、こ鬼にはいつもやさしくにこにこと

こ鬼のはなしをきいてくれるフグリが、この

ときとても意地悪にみえたのです。

 こ鬼ははりきっていいました。

 「でも。フグリにもみせてあげたかったよ。

ほんとうにふしぎでとてもきれいで、砂漠を

歩くらくだやにんげんのキャラバンたちは。

それにとてもぼくはかんげきしたんだよ。そ

してとても怖かったんだ。

 だって、この野原には」こ鬼はさきほどの

フグリのようにブンブンと大きくくびをふり

ました。「いや、土くれみみずだって、なが

れのひつじだって」そしてもういちど大きく

くびをふりました「鬼いちぞくぜんぶあわせ

たって、だあれも知らないよ。あんなふしぎ

できれいなところ。はじめて見るににんげんは、

図鑑でみたくらげのようで、たよりなくて、

そして繊細ににふえた」

 こ鬼はもうフグリの顔はみていませんでし

た。

 だってフグリといったら、こんな楽しい話

しをきかせてやっているのに、今にも泣きそ

うな顔をしているから。

 「ぼく、こんどおなじ夢をみて、またきり

ぎりすたちがぼくをさそったら、

 こんど行くよ。あの砂漠のむこうまで。

 ラクダにのってにんげんの子どもたちに会

いに行く。喜んでくれるはずだよ。こどもた

ちも。ぼくはそうおもう。

 だってね、ぼくたちは泣いたり笑ったり、

好きな子ができたり、けんかしたり、

 にんげんはぼくらよりずっとよわいいきも

のだってきいてるし、ぜぇんぶとはいわない

けれど、でもおなじなんだからさ」

 鬼の子ぱそれいじょう、フグリをみません

でした。フグリはしくしく泣き出していたか

らです。

 お空はすこし曇っていました。

 ほんとうに、今にも雨がふりだしそうなお

天気です。

「あらあら、きょうはおそらのひつじたち

も、もうとっくにかえっていってしまったわ。

あなたもおかえりなさいな。

 でも、砂漠のむこうにはぜったいいかない

で」

 フグリはそういいました。そしてこころの

なかで、なんかあなたにとってよくないこと

がおこりそうな気がするんですもの。といい

ました。きっとこ鬼は泣いてしまったわたし

を嫌なやつだと思っているにちがいなもの、

 「わかったよ。フグリ」

 フグリにはわからないよ。なんでもかんでも

神さままかせのこんなちいさな世界にすん

でいるんだから。でていってみたいなんてお

もったことないんだろ

 こ鬼はそうおもいましたが、なみだをこら

えているフグリのかおをみるとことばがでま

せんでした。

 「サヨナラ。フグリ、またくるよ」

 「でも、わたしはまんぞくしているわ」

 フグリはこ鬼のことばをこころからすっか

りきいてしまったように、そう答えたのでし

た。

つづく
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by junko-oo1 | 2006-12-24 14:07