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鬼と月と赤い砂漠6

鬼と月と赤い砂漠6

二ば毬を

 こ鬼はそういうとフグリにピースをしなが

らきらきらとした顔で鼻歌をうたいだしま

した。

 きいっとできる。きいっとできる。

 かみさまだあってしらないんだ。

 フグリはすこし困った顔をしています。

 そして、ほんとうにざんねんそうにいいま

した。

 そして、すこしもじもじしながらいいまし

た。
 
 こんなことをいったらこ鬼に嫌われないか

しら。もう、この野原にきてくれないのじゃ

ないのかしら。でも、フグリはじぶんのちい

さなすがたを細い目でぐるりとみわたすとや

っぱりこうこたえたのでした。

「・・・無理よ。ざんねんだけれど。あた

したちはとてもここからお外へはいけないの

よ。そうきまっているのよ。だれかがそうき

めたってわけじゃないのかもしれないけれど。

(ここからはなれたらきっと死んでしまうわ)

 あたしたちはあなたみたいに、自由じゃな

いもの。わたしの足はしっかりと根っこをは

っていて、うごくことはできないし。

 あなたのように駆け回れる足というものが

ないから、だから、ずっとずっと神様が生か

しておいてくださるまで、ここにいなくては

ならないの。そういうきがする」

 フグリはきっぱりと言いました。こ鬼の目

にはフグリがとてもよわよわしくうつりまし

た。

 フグリはなんて弱虫なんだろう。

 ちいさいお花というのはこんなに弱

いものなんだろうか。

 いいや、ちがう、フグリはとくべつ弱いん

だ。
 
 「だいじょうぶだよ。フグリ。ぼくが君の

あしごとはこんであげるから。いかないのな

ら、フグリは弱虫だ」

 こ鬼はすくっとたちあがると、ひざについ

た土くれをはらって、ちらっとフグリをみま

した。

 こ鬼もほんとうはすこしこわいのです。

 ひとりでなにかあたらしいことをはじめた

りするということは。だからこそ、なんでも

はなせるフグリについてきてほしかったので

した。

 「にんげんのこどもたちにはあってみたい

んだけれど、おかあさんにもあってみたいん

だけれど、きっと、あなたみたいにげんきが

良くてかわいらしいんでしょうね」

 フグリはざんねんそうになんどもくびをふ

ると、じっと黙り込んでもとのチイサナオオ

イヌのフグリになってしまいました。

 こうなってしまうと、こ鬼はひとりぽっち。

 フグリになにをはなしかけても、フグリは

ただのオオイヌノフグリ、ほかのお花たちと

おなじように、しずかにかぜにゆれるだけで

す。

 「もう、いいよ。よわむしフグリ」
 
 深い深い青にそまっていく空は本当に海の

そこのようで、きっと海を知らないこ鬼やフ

グリでも海というものをかんじたかもしれま

せん。もちろん空想ですが。

 たんぽぽのわたげがそんなに青く深くそま

っていく空にいっせいにふかれてとびあがり

ました。

つづく
by junko-oo1 | 2006-12-21 13:19


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